アンガーマネジメントと「危険空間」のリスク
NHK『逆転人生』、イタリアンレストラン、オーナーシェフ。コロナでも黒字を出す秘訣はスタッフのアイデアと取り組みです。
逆転前のレストラン。一つ星を10年続ける腕がありながら、お客さんが入らず従業員が立て続けにやめる危機、その理由はシェフのイライラ、怒り、束縛です。
気に入らないことがあると怒り「すぐに直せ」「前に言っただろう」などと怒鳴ります。
するとレストランは「危険空間」になり、みんなピリピリし、その雰囲気がお客様に伝わり、一組二組と来客が減っていき、スタッフも歯が抜けるようにやめていきました。
シェフにとっては未熟なスタッフを厳しく扱うことできちんとした料理を出すべし、という正論なのでしょうが、怒りが伴うと必要以上にきつく心をえぐる言葉になります。怒りに反応した心無い一言は鋭い刃となります。
行動経済学にプロスペクト理論(曲線)というものがあります。一言で言うと「人の心はプラスの言動に対しては鈍い反応だが、ネガティブな言動には強く傷つきやすい」というものです。「信用を得るには長い時間かかるが、信用を失うのは一瞬」。多くの芸能人が不倫や脱税、パワハラなどで芸能人生命を失っているのがその例です。
このシェフの心無い罵倒は一言で万ほどの感謝の言葉に値し、心をえぐられひどく傷つき、「危険空間」でスタッフが辞め、顧客が離れていくのです。「危険空間」でどのような見事なご馳走でもおいしいはずがありません。
そこで「アンガーマネジメント」、怒りの処方箋です。3つ紹介します。
1.心無い一言リスクの大きさを意識する
2.6秒ルール
3.反応せず選ぶ
1.心無い一言のリスクの大きさを意識する
先のレストランの例以外でも、カッとなって言った心無い一言で人間関係が壊れたこと、私は自分も含め、周りでそのような例をたくさん見てきました。最近では怒り起点ではありませんが、五輪組織元委員長・森さんの心無い一言、そのリスクの大きいこと。世界中からバッシングされました。
怒り起点の心無い言葉はとてもリスクが大きいのです。それが殺人事件に発展することもあります。そのリスクの大きさを意識し、言葉を選ぶことです。犯罪ドラマを見ると、殺人の3大原因が「怨恨」「痴情のもつれ」「金銭トラブル」ですが、すべてに怒りに任せた一言が絡んでいます。
カッとなる前に、またなったとしても、心無い一言が多くの大事なものを失うことを意識することです。
怒りは、「出来事⇒認知スタイル⇒怒り」のプロセスで起きます。「認知スタイル」で「怒りスタイル」の人は何にでも怒ります。猫が鳴いても起こります。ここで2つの選択があります。
2.6秒ルール
一つ目は、「反応しない」こと。出来事に無意識に反応するのではなく、6秒ルールで一拍おいて、冷静になること。
かっとなったり、むっとしたら6秒間別のことを考えることです。6秒すると出来事や怒りを忘れています。好きなことを思い出すといいでしょう。温泉に入りに行こう、旅行をしよう、カラオケはどうだ、と目の前の出来事を忘れることです。魔法のように怒りが消えます。
3.反応せず選ぶ
二つ目に、認知スタイルを寛容にして、考えて言葉を選ぶこと。「こういうこともある」「これもいい」と寛容スタイルにし、返す言葉を改善系にすることです。
具体例は、
部下の失敗 ⇒ (怒りに任せ反応) ⇒ 何やってるんだ、使えないな
部下の失敗 ⇒ (失敗から学んでとつぶやいて) ⇒ 次からどうすればいいか考えて取り組んで
と行動修正の気づきに注力することです。
先のレストラン、シェフがあるきっかけで気づき「寛容スタイル」で反応し、その結果「安全空間」に変わると、スタッフが様々なアイデアを出しコロナ禍でも着実に顧客の心を掴むレストランに変身したのです。
「安全空間」の大事さ、「危険空間」の怖さをよく示しています。
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