3章 ストライクゾーンにボールを投げ、ツボを刺激する:リーダーシップとモチベーション
○ストライクゾーンとは
人は誰しも興味・関心の領域があります。筆者の造語ですが、それが「ストライクゾーン」です。好奇心の広い人とは、ストライクゾーンの広い人をいいます。「ストライクゾーン」人はつながっています。例えば、「喫煙室、いわゆるタバコ部屋」。筆者は嗜みませんが、自動販売機があるためよく行きます。すると、とても和やかに話が弾んでいます。米国の大学にいた時の20年ほど前の経験ですが、冬の寒空の下、玄関外の灰皿のある喫煙スペースで談笑しながらタバコをすっている姿を良く見ました。タバコ好きは、つながっているんです。
このように、部下や家族のストライクゾーンを知り、ストライクゾーンギリギリの球を投げると、心をくすぐります。それがやる気を引き出すことにもなります。自分に関心を持ってもらえるのは、心地よいことだからです。
「心に火をつける」とは、言い方を変えると、ストライクゾーンを見つけ出し、そこにボールを投げ、キャッチボールをすることです。モチベーションというのはこれだけなんです。相手のことをしっかり見てあげて、ストライクゾーンに投げる。
○事例
手前の話で恐縮ですが、小学校低学年の息子は、工作とマジックが大好きで、やっている時は目がきらきら輝いています。コップとかフタなどガラクタが宝物です。何をどう使ろうかと常に頭の中で考えているようです。学校で勉強しているのかな、と思えるほどです。帰ってくるとランドセルを投げ捨て作り始めます。筆者が帰る頃には、いろいろなものができてるんです。テレビを見ようとすると目の前に持ってくるのです。どうしますこれ。「今テレビ見たいから見れない」とか言えないですよね。ここが大事なんです。見てあげることが、彼にとっての「大ストライクゾーン」にボールを投げることなんです。これをじっくり見てあげます。じっくり見ると、凄い工夫しているんですね。
大人はマニュアル人間になっていますから、「こういう風に作らなきゃいけない」とか考えますけど、子供は自由人です。自由に曲げたりくっつけたりするんです。じーっと見ると、まあ言いすぎですけど、涙が出るくらい凄いなと思います。そのくらい人はストライクゾーンに没入すると伸びるんです。目がきらきらして。そのボールをしっかり受け取ってあげるだけで、その人は伸びるんです。「心に火がつく」んです。
○際どい球、ツボ、好奇心、観察
こつは、際どい球を投げることです。特に琴線に触れる部分を刺激すると、強くやる気を刺激します。これが「ツボ」です。ど真ん中、または、ゾーンの端の際どいところにあることが多く見られます。人によってその広さや、分野は異なります。
ど真ん中にこう「ずばっ」と投げるのもいいですが、際どい所に投げてあげたほうが、相手は喜ぶんです。際どい微妙な所に投げてあげると、皆「にこっ」と笑うんですね。「この人、よく分かるな」と。
こういう所を見つけるのが、「観察」なんです。日頃から人と知り合ったら、何が好きか、何に興味を示すか、どういう所に注意がいってるか、観察して、そして話をするんですね。見つかったらそこへどんどん投げていくんです。するとにこっと笑うポイント、がははと笑うポイントがまた出てきます。
○人を乗せるのがうまい人、聞く耳と暴投
人を乗せるのがうまい人は「ストライクゾーン」、中でも「ツボ」をおさえるのが上手な人です。会話や観察からストライクゾーンを見つけ出し、ど真ん中やぎりぎりにボールを投げ込みます。すると、目がきらりと光り、活き活きとした返事が返ってきて、キャッチボールが始まり、軽妙な会話が続きます。投げたボールがストライクゾーンに入っている限り「聞く耳」を持ってもらえるからです。外すと反応が無い、または心を閉ざします。これは暴投です。
上司の方は、部下の「ストライクゾーン」と「ツボ」を言えますか。親御さんは、お子さんのそれを言えますか。試してみてください。実はモチベーションというのは、凄く簡単なことなんですね。相手の持っている関心を見抜いて、そこにボールを投げ続ける、逆にボールを受け取ってあげれば良いです。しかも、とってもラフでいいんです。きっと目がきらっと光ります。
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