5章 場作り:何でも話してよい魔法の場:リーダーシップとモチベーション
○組織活動の4プロセス
いくつかの企業でモチベーション向上のお手伝いをしていると、大きく2種類の職場に分かれます。一つは「ギスギス」した職場、もう一つは「和やかな」職場です。その違いはどこから来るのでしょうか。
「組織活動の4プロセス」というのがあります。組織はまず、「1.どのような場を作るか、目的を共有します」、そして、「2.人間関係を作って、お互いを認め合って」、そして、「3.分析的なことを行い(構造化)」、そして、「4.合意し、行動する」というプロセスです。
1.場作り:目的・価値観共有
2.引き出し:対人関係づくり
3.構造化:かみ合わせ
4.合意形成・実行:まとめて、分かち合う
家族でも、サークル活動でも一緒です。場を作り、対人関係をつくり、難しい課題に取り組んで、そしてやりきる。
○ギスギス職場と和やか職場
ギスギス職場は、「1.場作り」「2.引き出し」が欠けたまま、「3.構造化」「4.合意形成」を実行しています。対人関係がしっかりとできてないまま、心と心がつながらないまま、いきなり難しい課題に取り組む。比喩すると、エンジンにエンジンオイルを入れないで、フルスロットルでエンジンを回しているようなものです。すごくギスギスしているように感じます。質問しても、「どういう意味」と聞き返される。いちいちきっちり説明しないと先に進まない。そういうギスギス感があります。
コンプライアンス問題に取り組んだ経験がありますが、コンプライアンス問題が起こる背景は、プログラムの充実よりも、問題も含め何でも話せる場があるかどうかです。
逆に和やか職場は「1.場作り」「2.引き出し」ができていて、スムーズに行くのです。エンジンオイルがたっぷり入って、人間関係ができていますから、ちょっとやそっとのことではくじけない。強い関係ができていれば、「3.構造化」「4.合意形成」がスムーズに行きます。阿吽の呼吸で進む、とうこともあります。人間関係を作ることの大事さの意味がここにあります。
みなさんの職場やご家庭はいかがですか。
○否定せず、受容れる
場作りのポイントは、カウンセリングの場作りが参考になります。「この場では何でも話しても大丈夫なんだ」という雰囲気をつくる、ということがあります。どんなことを話してもとがめられない、自分に正直でいい。何にも囚われないでいいという場です。
みなさんの職場や家庭ではどうですか。何でも話しても大丈夫ですか。何か言うと否定されませんか。何か発言したときに受け取り手が「おもしろい、なるほど」と取るのか、「何それ、知ってる」と取るのか、の差だけです。この「否定」が曲者です。
筆者が良く相談されるのは、会議が盛り上がらない、何でも相談してくれ、と言っても相談に来ない、などです。その時は、こう言います。「逆の立場で考えてみてください。あなたが部下だとして、どういう風にしてあげたら会議で発言しやすいですか、上司に相談しやすいですか」と。「おのずと答えが出ると思います。発言すると、つまらなさそうに聞いていたり、良い意見ではないという態度だったりしていませんか。」と。これが「否定」です。まずは、互いの存在を肯定し、認めることが大事です。
○「ストライクゾーン」を中心に、「共有」し、一緒に取り組む
ポイントは、何かを共有することがスタートです。ストライクゾーンを共有する、目的を共有する、価値観を共有する、体験を共有するなどです。「たばこ部屋」の要領です。具体的に、共通目標づくり、共体験、共感することが場作りのポイントです。例えば、合宿で「職場の将来を考える」というのも一つの方法です。「職場でより気持ちよく仕事をするにはどうすればよいか」「5年後の自分と自分たちの成長した姿と、そこに至るにはどうすればよいか」などを話し合って、一緒にお風呂に入って、美味しい食事をし、お酒を飲んで(共体験し)、共感する機会を持つことです。家族のことや趣味の話でもいいのです。
筆者の行っている研修や勉強会活動では、合宿、性格診断、血液型などを使います。一緒の食事をいただき、お酒を飲み、お風呂に入り、研修した内容や日頃の悩みなどについて話をします。また、宴会での何ともいえない恥ずかしい写真も共感を引き出します。
これらの活動を「一緒に行う」ことで「いい関係づくり」を実践します。「幅広い共通の関心を持ち、一緒に物事に取り組む」ことで「いい関係」とチームの「好奇心」「ポジティブ思考」を育みます。
ある研究では、プロジェクトチームが成功するキーワードは、発想が多いことに加え、それぞれのアイデアに対しメンバーが「おもしろそうだ、やってみよう」という思考を維持していることだそうです。
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