楽しさ・苦痛の記憶:ピーク・エンドの法則、デュレーションネグレクト

1.ピーク・エンドの法則

楽しさ・苦痛の記憶=(ピーク+エンド)÷2


楽しさ記憶の例。

楽しい1週間の旅行を想定してください。楽しさを覚えているのは最も楽しかった時(ピーク)と最後の時(エンド)というものです。足して2で割った楽しさがその思い出となるという法則です。


苦痛の例ではどうでしょう。

注射を打つ時、痛みの絶頂(ピーク)と最後、抜く時(エンド)の痛みが記憶に残ります。2人の看護士さんで、刺す時最も痛いと感じ、同じ痛みでも、抜く時に上手な看護士さんの方が痛くない記憶が残るというものです。


したがって、楽しい思い出を残す、苦痛を和らげるには、クライマックス(ピーク)と終わり(エンド)を良くするべき、となるわけです。


2.デュレーションネグレクト(持続時間の無視)

苦痛や快楽の記憶は長さは関係ないというものです。

例えば、痛みが続く10秒の注射と20秒の注射でも、痛みの頂点と終わりが一緒であれば一緒だし、痛みが長くても頂点と終わりの苦痛が小さければ、痛みの記憶も小さいのです(表参照)。


   表 痛みの記憶の例

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ピーク エンド デュレーション 痛みの記憶順番

        (持続時間)

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10   10    10     1(最も痛い)

10    5     10     2(中庸)

10    1     50     3(最も痛くない)

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資料:筆者作成


これらのことから、記憶は積み上げでなく2点であること。「仕上げが肝心」「画龍点睛(がりゅうてんせい)」という諺が示すように、最後が思い出にも当てはまるのです。


参考資料:D.カーネマン著、村井章子訳『ファスト&スロー(下)』早川書房 、2012